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◆ 「空が酷く晴れた日」と言う名の今日。
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現在、午後13時22分。
ジョン吉は、彼にとっての「とある喫茶店」である所の、「喫茶メルヘン」の入り口のドアに付いている鈴を鳴らした。


本来であれば、十分程で到着する予定であったが、何故だか到着には小一時間が掛かった。
スクランブル交差点や、昼間の街灯、手のやり場や、ポケットの事は、きっと時間を消滅させる効果があったのだと、ジョン吉は思った。

思ったというより、どうでも良かった。
なぜなら、ジョン吉は今日と言う日が嫌いだったし、時間が消滅する事もありえない。
どうでも良かったので、そう思った。

あるいは、今日は何だか気持ちが晴れやかでは無いので、「今日」が嫌いになった。
時間も何処かへ消滅してしまったし。
と、言い換えても差支えが無いとジョン吉は思った。


そもそも、自分の気持ちが晴れやかで無いのは、空が酷く晴れているからであろうか。
そんな気もした。

そう考えると、喫茶メルヘンの薄暗い店内は、もしかしたら今日の自分にとって最適な場所だと言えるかも知れない訳だ。


店内にはテレビ画面をぼんやりと眺めている店主と、一人の男が居た。

その一人の男は店の一番奥にある4人がけのテーブル席に座っていたのだが、その席はジョン吉がいつも座る席だった為、少し戸惑った。
しかし、気を取り直してその隣にある同じ色形をした4人がけのテーブルへ腰掛ける事にした。

テーブルだけを眺めている分には、いつもと同じ光景を得られるからだ。


ジョン吉は、彼にとっての「とある喫茶店」でいつも注文するナポリタンを注文し、店主の運んできた水の入ったグラスを手にした。
水の入ったグラスを手に取る事は、手のやり場に対する考察の一時的な結論である。

そして、その後はテーブルを眺めていた。
やはり良く見ると、いつもと違うテーブルなのだが、その事に何だか新鮮な気分を感じた。

味気無いナポリタンが待ち遠しかった。



続く・・・次回『万作(6)』

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◆ メルヘンナポリタン。
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次回、ナポリタンがメルヘンな事に!?