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◆ メルヘンナポリタン。
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壁に掛けられた時計の針が午後13時46分を指そうとした時、喫茶メルヘンの店主は「メルヘンナポリタンおまたせ。」と言い、ジョン吉のテーブルに皿を置いた。

いつも思うのだが、ナポリタンの名称は、どんなナポリタンだって「ナポリタン」で十分だ。
「メルヘン」は不要では無いか、とジョン吉はいつも思う。

また、ナポリタンと言う言葉は、何度も反芻する内に、ゲシュタルト崩壊を起こしやすい言葉だとも思う。

それにこの場合「メルヘンな、ポリタン」と区切る位置を変えると、「ポリタン」って一体何の事だろうか。
と、新たな疑問がわいて来たりする。


「いつも思うのですが、ナポリタンの名称は、どんなナポリタンだって「ナポリタン」で十分だと思いませんか。」
隣のテーブル席に座っていた男がジョン吉に声を掛けて来た。

そのテーブル席はジョン吉が座ろうと思っていたテーブル席だったが、今は隣のテーブル席に座っている男の座るテーブル席である。
その男はソーダ水を飲んでいた。


そして、ジョン吉は思った。
ナポリタンって一体何の事なんだろうか。

しかし何の事は無かった、目の前のケチャップで味付けされたスパゲッティの事で、それは現在、湯気を立てていた。


ジョン吉は言った。

「そうかもしれませんね。」



続く・・・次回『万作(7)』

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■ 第四章 ポリタン
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「ポリタン」
そう言う、ロボットの名前である。


次回、新展開!
『万作(7)』お楽しみに!


※掲載をウィークデイにしてみました。
(土日・祝をのぞく日。)